さあ、最高の夜を演出しましょう!



 人生において大切なイベントごとというのは確実にある。そう今日は待ちに待ったクリスマス!恋人たちの冬の祭典!イルミネーションブラボー!大切なのはハートなのよ!つまりはそういうこと。今日はあたしの大切な友達であるユリにとっては彼との最初のクリスマス。ていうか、ユリに彼氏持ちでのクリスマス自体が初。おいおいおいまったく。二十歳にもなって、あんたほどのかわいい子ちゃんにしちゃあまりに遅すぎるだろとあたしは思うけど、ユリは照れ屋さんだからねぇ。まあそこがユリにとってとってもいいところなんだけど、古い付き合いから言わせてもらえればほんとやっとと言った感じだね。まったく、この照れ屋さんめっ。ああ、懐かしいね。初めてユリと出会った日のこと。あれも確かクリスマスだったわね。小三のユリとあたしの出会いはその頃だったわ。ユリったら、初めて見るあたしに満面の笑み浮かべてさ。色々べたべただったけど、あたしにはそれが輝いて見えたのさ。ほんとに懐かしいね。あれからもう十年がた経つのかい。あの愛らしいちっこい子が。いや、今でもちっこいままの愛らしい子なんあけどね。これ言ったらユリは怒るかしら?まあいいわね。事実は事実なんだし。でもだからこそあたしはユリがこのクリスマスに成功するように精一杯手伝う心づもり。負けんじゃないよ。最高のクリスマスにしてやるんだからね。
「もっ、もう、今日がクリスマスなんだよね……」
 おっかなびっくりと言った感じでユリは呟く。おどおどしてんじゃないよ!まったく。そのびくびくしたとこは小学生のころから全然変わってないわね、あんた。そのエプロンも中学の頃からずっと使ってる奴だし。ほんと成長しないわね。いや一部異常に成長してるけどさ。
「だ、大丈夫かなぁ……」
 だから心配しすぎだって。あんたは可愛いのよ。自信持ちないさいよまったく。情けないったらありゃしない。安心しなさい。あたしがいるんだから、きっとあんたたち二人を上手く良い雰囲気にしてやるんだから。ほら、一度手を止めて見てみなさい。後ろにあんたが必死に梱包(こんぽう)したあの可愛いらしい包みを。あそこには何が入ってるの?ん、言ってみ?ほら、ウジウジ円を描いてないでさ。あそこにはそう、あんたが今日まで必死に準備してきた手編みのマフラーがあるだろう?今日この日のために毎日毎日コツコツ必死に本とか見ながら頑張って作ってきたんだろ?あれをシンジに渡すんだろ?悔しいけどあいつはできた男だよ。ていうか、このあたしに納得させた男なんだよ。だからそんなに心配する必要はないわよ。堂々と渡しなさい。あんたいつも一生懸命な良くできた子っていうことをあたしは誰よりも知ってるの。だから安心なさい。
「よ、よぅし、頑張るぞ」
 そうそう頑張りなさい。もうひと踏ん張り。あんたなら大丈夫よ。絶対。このあたしに誓って間違いないわ。なんてったって、あたしとあんたは長い付き合いだからね。腕が落ちればすぐにわかるわ。だから大丈夫。今日のあんたはいつも以上に凄いわ。なんていうか、こう、愛情がいっぱいなのよ。いつものこれまでのクリスマス以上だわ。ふふ、完璧よ。だから、完成したら後はあたしに任せて。この最高のあたしがあんたら初々バカップルの夜を最高に盛り上げてやるわ。上品なワインとかあればなお良いわね。お酒は最高よ。気分がより盛り上がるし燃え上がるわ。ああ、そう言えばあんたたち、キスもまだなんだっけ。ああ、思い出したらなんだかムカムカしてきたわ。この女子中学生が。ええ、もうこうなったら今夜にでも決めさせてやるわ。このあたしの力できっとね。幸いあんたは他の女に負けない良いもん持ってんだから、男なんてその気になればイチコロでしょうが。もうほんとにウブなんだから。良かったわね、そこは人以上に成長できて。身長は相変わらずちっこいのにさ。ああいいわねーコンチクショウ。ていうか、今思えばシンジはロリコンなのかしら。まあいいわ。そんな些細なこと。変態だろうとなんだろうと、今日こそあんたとシンジをこのあたしの力でくっつけてやるわ。こうなればもう意地よ。やるからには本気よあたしは。考えてからだんだん体が熱くなってきたわ。よっしゃあああ燃えてきたあぁぁぁああ!いい!?ユリあんたも今夜は覚悟しときなさいね!シンジに食べられる覚悟よ!いいわね!?
「た、食べてもらえる……のかな?」
 コラコラコラそこで照れるな赤くなるな。あんた付き合ってるんでしょう?なら全然問題ないわ。むしろ今までキスすらしてないあんたらこそが問題なのよ。しかしあたしもクールにならなくちゃね。あたしがいつまでたっても燃えてたら逆にユリは迷惑するからね。早く頭を冷まさないといけないわ。ひっひっふぅ。よしこれでばっちりオーケー。それからあたしもお化粧を開始。このあたしがすっぴんのままシンジの前に出たらひかれるどころの騒ぎじゃないからね。むしろ存在意義に関わるわ。ああ、ほんとヤんなっちゃうわ。化粧していないあたしは全然本当に存在意義がないんだもの。むしろ途中過程ね。これからどんな化粧を施すかによってさらに雲泥の差がはっきりとわかるんだし。……よし、ユリのおかげで綺麗に化粧できたわ。これなら全然オーケーベリーキュートよ!さあしっかり包んだ?忘れ物はない?マフラーは大丈夫?準備は万端?最終確認はできた?よし、オーケーね。ユリ今夜は一段と可愛いわよ。あんた今日あり得ないくらいに輝いているわ。最高よ。あたし以上に最高よ。
「よし、行ってきまーすっ!」
 じゃあ、後はあたしに任せなさい。必ずやあんたら二人に最高の夜を与えてあげる。
 さあ、最高の夜を演出しましょう!



「うわぁ……手編みのマフラー」
「ご、ごめんね。形も変だし迷惑だったかな?」
「いやいや何言ってんだよ。めっちゃ嬉しいよ! 最高だよ! ……ほら、似合うか?」
「う、うん……可愛いよ」
「そ、そうか。まあ……うん。ありがとう。なんか照れるな。ちぇっ、もっとどうせならもっといいものプレゼントしとけば良かったな」
「そんなことないよ! このネックレス、すっごい可愛いし、前からずっと欲しかったし!」
「まあ……いや、うん。気に言ってもらえたようで良かったよ」
「そ、それでね。もうひとつプレゼントがあるんだけど……一緒に食べない?」
「おっ、クリスマスケーキだね。うわぁ、ほんとに美味しそう」
「そりゃ、わたしの数少ない特技だからね。大体小学三年生くらいからお母さんと作ってたから、味も大丈夫だと思う」
「ははっ、何自信なくしてんだよ。ユリが作ったものなんだから絶対上手いって。じゃあ、さっそく食べようぜ」
「うん」
「…………ウマい。これ、マジでウマいよ!」
「ほんと!」
「ああ、ほんとほんと! 最高だよ!」
「良かったぁ……」
「………………こりゃあ、俺も頑張ってもうひとつのプレゼント渡さなくちゃな」
「え? どうしたの?」
「いっ、いいや別になんでも! なんでもないから! ただの独り言だから!」
「そう? ささっ、もっといっぱい食べてね」
「お、おうっ」


 ほらね、あたしの言った通りだろ?
 二人とも末長くお幸せにねっ!





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